一回目

私は斡旋所で紹介された同士と共に、その迷宮へと赴いた。
パーティーのメンバーは戦士(6級)、魔法使い(7級)、僧侶(6級)、そして私(僧侶:8級)の合わせて4人。
なかなかバランスの良い組み合わせではないだろうか。
入口に到達した私は、早速皆に挨拶をした。
…しかし、誰もいない。その時には皆鴇の声をあげてスケルトンに切りかかっている真っ最中だったからである。
なんとも余裕のない仲間だ。たかだか挨拶に5秒かかった程度でもう進撃しているとは。


〜 中略 〜


鉄球をやり過ごし、仕掛け弓矢のトラップを回避する。
慎重に足を進める私の元に、先行していたはずの戦士が戻ってきた。
そしてなにやら目の前でジェスチャーをし始める。
「回復してくれ!」
なに、回復だと?
確かにマイナーヒーリングのスキルは持っているが、パーティープレイ初体験の私に他人を回復した事などな
「回復してくれ!」
ちょっと待て、急かすな。他の対象物を回復する場合は確か
「回復してくれ!」
ええい、うるさい!
催促の声に耐え切れなくなった私は、袋の中からポーションを取り出すと、投げつけるようにして目の前に置いてやった。
その戦士は一瞬戸惑いを見せたものの、「ありがとう」の声と共にポーションを回収し、再び前線へと舞い戻っていった。
…ふう、なるほど。これが僧侶の役割というものか。なかなか厳しいものだな。


〜 中略 〜


ケルトンナイトを倒し、大広間に出ると、一番左端の転送機が稼動状態となっていた。
その時私は気が付いた。これが迷宮に潜む主への道だと言う事に。
震える体を必死に押さえつけていると、突如隣に巨大な影が現れた。
あれは…噂に聞くガーディアンリザードマン?
一体誰が召還したのだと周りを見渡してみると、道中私と同様にお荷物…もとい、サポートに徹していた魔法使いがニヤリと笑みを浮かべているではないか。
ここで引いては男が廃る。私は負けじと召還呪文を唱えた。
「出番だぜ!」
そして煙と共に現れたのは…我が最強なる僕、コボルトウォーリア。
早速どうだとばかりに魔法使いを見返すと、奴はますます私に向ける笑みを深くしていたのだ…!


〜 中略 〜


情勢は至極あっさりと決した。我がライバルが召還したGLが雑魚どもをなぎ倒し、戦士と僧侶が主へと飛びかかる。
私の僕であるコボルトウォーリアも善戦していたものの、主の配下であるリザードマンの前に露と散っていった。
そうして部屋の隅で傷を癒していた私の耳に、高々とファンファーレが響き渡る。
見ると主が地響きを上げて地面に突っ伏した所だった。
これで…終わりなのか?
思わず辺りを見渡してみると、どのメンバーの顔も安堵に包まれていた。あの魔法使いの顔さえも。
そうか、私たちは勝ったのか!
噂に聞く死者の迷宮もこの程度とは。出発前に躊躇っていたのが馬鹿らしいほどだ。
死者の迷宮、恐るるに足らず!